ここ磐田市でも、遠州のからっ風とともに朝晩の冷え込みが厳しくなり、畑に霜が降りる日が増えてきました。
これまでの記事では、冬の防寒対策として[「トンネル掛け」]や[「マルチング」]をご紹介してきましたが、最後にご紹介するのは、最も手軽で効果が高い**「不織布(ふしょくふ)」**です。
軽くて通気性の良い不織布は、冷たい北風から野菜を優しく包み込んで守ってくれる、いわば**「野菜のセーター」**のような存在。不織布を一枚掛けるだけで、冬越しの成功率は劇的に変わります。
今回は、初心者の方でも失敗しない不織布の選び方から、具体的な設置のコツまでを詳しく解説します。

キャベツの芯が丸まってきました。朝霜が降りたので不織布のトンネル掛けしました。
1. 菜園を支える不織布の万能活用術

家庭菜園における不織布(別名:パオパオ)は、初心者でも扱いやすく、防寒以外にも多様なメリットがある非常に便利な資材です。
1. 不織布(パオパオ)とは?
繊維を織らずに絡み合わせたフェルト状のシートで、農家では「パオパオ」とも呼ばれています。 最大の特徴は、**「通気性」「透水性(水を通す)」「光を通す」**性質を持っていることです,。そのため、かけたまま水やりができ、換気の手間も不要である点が、ビニール資材と大きく異なります,。
2. 具体的な効果
不織布には防寒を含め、主に以下の5つの効果があります,。
1. 防寒・保温効果: 地表面の温度を日中で2~3℃、夜間で1℃前後上昇させます。真冬の厳しい寒さを完全に防ぐほどの保温力はありませんが、季節の変わり目の寒さ対策として有効です,。
2. 霜よけ: 放射冷却による霜から作物を守り、葉が凍結して傷むのを防ぎます,。特に春先の遅霜や、秋の終わりの霜対策に適しています。
3. 発芽・活着の促進: 地表の水分を保ち、土の乾燥を防ぐため、種まき後の発芽や苗の活着(根付き)を良くします。
4. 防虫効果: アブラムシやキスジノミハムシなどの害虫の侵入を防ぎます,。
5. 防鳥・防風: カラスなどの鳥害や、冷たい風による乾燥・傷みから作物を保護します,。
3. 主な使い方
家庭菜園での使い方は、大きく分けて「べたがけ」と「トンネル栽培(または二重被覆)」の2種類があります。
① べたがけ(初心者向け)
支柱を使わず、作物の上に直接ふんわりとかぶせる方法です,。
• 方法: 作物の成長を妨げないよう、ゆとりを持たせて被せ、風で飛ばないように端を土やU字ピンで固定します。
• メリット: 最も手軽で、5分程度で設置できます。換気不要で、かけたまま水やりが可能です。
• 適期: 春先の種まき直後や、霜の降りる時期の葉物野菜(ホウレンソウ、小松菜など)の保護に適しています,。
② トンネル栽培・二重被覆(本格的な寒さ対策)
支柱を立ててトンネル状にする方法、または他の資材と組み合わせる方法です。
• 不織布トンネル: 支柱の上に不織布を張ります。ビニールほどの保温性はありませんが、通気性があるため高温障害のリスクが低く、管理が楽です。
• 二重被覆(最強の防寒): 「不織布のべたがけ」の上に、「ビニールトンネル」を設置する方法です。不織布が結露を吸い、ビニールが保温するため、真冬でも高い保温効果を発揮し、生育を促進します,。
• 重ねがけ: 不織布を2枚重ねにすることで、保温性と耐久性を高める工夫もあります,。
4. 資材の選び方と注意点
• 耐久性: 100円ショップの不織布は薄く、屋外で使用すると短期間(数ヶ月~1シーズン)で劣化しボロボロになることがあります,。長く使うならホームセンターなどで売られている農業用(厚手・高耐久)のものが推奨され、丁寧に使えば2~3シーズン使用可能です,。
• 光線透過率: 光をよく通すもの(透過率90%程度など)を選ぶと、生育環境を良好に保てます,。
• 管理: 暖かくなってきたら、蒸れを防ぐために取り外す必要がありますが、ビニールに比べるとそのリスクは低いです,。
まずは手軽な「べたがけ」から始め、寒さが厳しい時期や地域ではビニールトンネルとの併用(二重被覆)を検討するのがおすすめです。
2. 実践!不織布の具体的な使い方(3パターン)

1.【パターンA】一番簡単!「べたがけ」
支柱を使わず、野菜の上に直接ふんわりと不織布をかぶせる方法です。
- 向いている野菜: ホウレンソウ、コマツナ、春菊などの葉物野菜。
- ポイント: 野菜が成長しても窮屈にならないよう、少しゆとりを持たせてたるませるのがコツです。風で飛ばされないよう、端を土に埋めるか、「Uピン」や「トンネルパッカー」などでしっかり固定しましょう。
2.【パターンB】背の高い野菜に「トンネルがけ」
園芸用支柱(ダンポールなど)をアーチ状に立てて、その上から不織布を張る方法です。
- 向いている野菜: ブロッコリー、キャベツ、または少し背が高くなってきた苗など。
- ポイント: 葉が不織布に直接触れないため、より凍結しにくくなります。裾はしっかりと土で埋めて隙間風を防ぎましょう。
3.【パターンC】鉢植えや果樹の防寒に「ぐるぐる巻き」
移動できない庭木の幼木や、寒さに弱い大きめの鉢植えの対策です。
- 方法: 幹の部分に包帯のように巻きつけたり、植物全体をすっぽりと覆って紐で縛ったりします。特に寒さに弱い柑橘類(レモンなど)の冬越しによく使われる手法です。
3. 不織布を風に飛ばされないための工夫
不織布はその軽さが魅力ですが、風の影響を非常に受けやすいという弱点もあります。特に私たちの住む磐田市周辺では、冬になると「遠州のからっ風」と呼ばれる強い北風が吹き荒れます。
せっかく掛けた不織布が飛ばされてしまうと、野菜が寒さにさらされるだけでなく、近隣への迷惑や資材の破損にも繋がりかねません。飛ばされないためのポイントは、**「風の入り口を作らないこと」と「地面と一体化させること」**です。
1. 失敗しない!ピン打ちのコツ
不織布をしっかり固定するために最も重要なのが「ピン打ち」です。以下の3つのコツを意識するだけで、強風への耐性が劇的に上がります。
- ピンの間隔は「欲張らずに狭く」 通常は1m間隔でも十分ですが、風の強い地域や開けた畑では50cm〜80cm間隔で細かく打つのが鉄則です。特に風上(北側)は、隙間から風が入り込まないよう念入りに固定しましょう。
- ピンを打つ「角度」にこだわる ピンを真上から垂直に打つのではなく、外側(不織布を引っ張る方向)に少し傾けて斜めに打ち込むのがコツです。こうすることで、風に煽られてもピンが抜けにくくなります。
- 「U字ピン」と「押さえ板」の併用 不織布は薄いため、ピンだけで留めると破れてしまうことがあります。プラスチック製の「押さえ板(座金)」がついたピンを使うか、U字ピンの上から土を少し寄せて「重し」にすると、より強固に固定できます。
4. 甘さ極まる!寒じめ栽培
「防寒対策(いかに温めるか)」についてお話ししてきましたが、**「寒じめ栽培(かんじめさいばい)」はその逆で、収穫直前の野菜を「あえて寒さに当てる」**ことで味を良くするテクニックです。
そのメカニズム、対象野菜、具体的な手順について解説します。

1. 寒じめ栽培とは?
ほうれん草や小松菜などの冬野菜を、収穫の2~3週間前からあえて寒風や低温にさらす栽培方法です。 これまでお話しした「ビニールトンネル」や「不織布」で大きく育てた後、最後にその被覆を開放して寒さを経験させます。
なぜ甘くなるのか?(メカニズム)
野菜は寒さに当たると、体内の水分が凍ってしまわないように、自分自身で身を守ろうとします。
1. 水分の調整: 凍りやすい水分を減らし、細胞液の濃度を高めます。
2. 糖化: 体内のデンプンを「糖」に変えます。砂糖水が真水より凍りにくいのと同じ原理で、凍結を防ごうとします。
結果として:
• 糖度アップ: 驚くほど甘みが増します。
• 食感の変化: 葉が厚くなり(肉厚)、独特の歯ごたえや柔らかさが生まれます。
• えぐみの減少: 苦みやえぐみが減り、栄養価(ビタミン類)も高まると言われています。
2. 適した野菜
寒さに強い葉物野菜が適しています。
• ほうれん草: 最も代表的です。「ちぢみほうれん草」などはこの方法で作られます。
• 小松菜
• 青梗菜(チンゲンサイ)
• ターサイ
3. 具体的な手順(家庭菜園でのやり方)
「寒じめ」は最初から寒くするのではなく、**「ある程度大きく育ててから」**行うのが鉄則です。小さいうちに寒さに当てると成長が止まってしまいます。
1. 保温して育てる(11月~12月頃):
◦ 種まき後、これまで確認した「不織布」や「ビニールトンネル」を使って保温し、野菜を収穫できるサイズまでしっかり育てます,。
2. 寒さに当てる(収穫の2週間前~):
◦ 収穫予定の2~3週間前になったら、トンネルの裾を大きく開けるか、被覆資材を取り外して、外の冷たい空気に直接当てます。
◦ 目安: 気温が5℃以下になる環境を作ります。
3. 収穫:
◦ 葉が横に広がり(ロゼット状になり)、厚みが出て濃い緑色になったら収穫適期です,。
4. 成功のポイントと注意点
• 小松菜の注意点: ほうれん草に比べて寒さに弱いため、寒気にさらす期間を短めにするか、様子を見ながら調整する必要があります。あまり長く寒さに当てすぎると葉が傷む(白っぽくなる)ことがあります。
• 不織布の活用: 以前のトピックに出てきた「不織布トンネル」を使用している場合、収穫サイズになったら数日間不織布を外して寒さに当てるだけでも効果があります。
• タイミング: 最初から寒さに当てると大きくならないため、「十分育ってから仕上げに行う」ことが最も重要です。
普段は「防寒」で守りつつ、最後だけスパルタに「寒じめ」を行うことで、家庭菜園でもプロ並みの甘い冬野菜を作ることができます。
「冬の防寒対策は、不織布だけではありません。さらに効果を高めたい方は、こちらの記事も参考にしてくださいね。」
5. 私が愛用している!失敗しない「防寒・霜よけ資材」
ここまで不織布のメリットや設置のコツをお伝えしてきましたが、「どれを選べばいいか迷う」という方のために、私が実際に磐田の畑で使用して「これは使いやすい!」と感じた資材をご紹介します。
1. 【本体】農業用不織布(パオパオなど)
家庭菜園なら、まずは扱いやすい10m〜20m巻のものがおすすめです。
- おすすめの理由: 100円ショップのものよりも厚みがあり、遠州のからっ風にさらされても破れにくい「農業用」を選んでいます。光もしっかり通すので、野菜がひょろひょろ(徒長)せずに育ちます。
2. 【固定用】Uピン杭(押さえ板付き)
不織布を留めるなら、プラスチックの「押さえ板」がセットになったものが必須です。
- おすすめの理由: 不織布は薄いので、ピンだけで留めると風で「ビリッ」と破れてしまうことがあります。板付きなら面でしっかり押さえてくれるので、強風の日も安心感が違います。
3. 【支柱】トンネル支柱(FRP支柱)
ベタがけではなく、トンネルにする場合に。
- おすすめの理由: 錆びにくく、適度なしなりがあるFRP製の支柱は、不織布との相性も抜群です。長く使えるので、結果的にコスパも良くなります。
6. まとめ:不織布(パオパオ)で冬の野菜を賢く守ろう
今回は、冬の家庭菜園の強い味方「不織布」の活用術について詳しくお伝えしました。
最後にもう一度、大切なポイントを振り返ってみましょう。
- 不織布は「野菜のセーター」: 軽くて温かく、霜や北風から優しく守ってくれます。
- 管理が驚くほど楽: 水や光を通すので、ベタがけしたまま水やりが可能です。
- 磐田の風対策は念入りに: 50〜80cm間隔のピン打ちで、遠州のからっ風に負けない設置を。
冬の寒さに耐える野菜たちは、このひと手間で春の収穫量が劇的に変わります。最初は少し手間に感じるかもしれませんが、不織布に包まれて元気に冬を越す野菜の姿を見ると、菜園家としての喜びもひとしおですよ。
防寒対策は「組み合わせ」が最強です
今回ご紹介した不織布は、すでにお伝えした**「トンネル掛け」や「マルチング」**と組み合わせることで、さらにその効果を発揮します。
それぞれの特徴を活かして、あなたの大切な野菜たちにぴったりの「冬支度」をしてあげてくださいね。
春に美味しい野菜をたくさん収穫できる日を楽しみに、一緒に冬の菜園作業を楽しみましょう!

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